普段、腎臓の健康を意識されているでしょうか。
腎臓といえば、「尿を作る器官」ということで知られているかと思いますが、それも誰でも知っているほど一般的でないかもしれません。
また、消化器のひとつである膵臓(すいぞう)と違いを迷う方もいらっしゃるかもしれません。
重要なことを「肝心」といいますが、これは肝臓と心臓が人体にとって重要な臓器であることからできた言葉ですが、「肝腎」とも書きます。
つまり、腎臓は、心臓や肝臓と同じくらい重要な臓器であることが昔から知られていたことになります。
尿を作ることは、もちろん重要ですが、それだけではない役割が腎臓にはあるのです。
腎臓とは?
腎臓は、肝臓の下の背中側にある、握り拳ほどの大きさの臓器です。
背骨に対して左右に一つずつあり、そら豆の様な形をしています。
くぼんだ形状のところには、腎動脈や腎静脈、リンパ管、尿管が繋がっています。
左右の腎臓の間には、並行して大動脈と大静脈があります。
大動脈と大静脈から分岐した太い血管は腎臓と繋がっており、それぞれ腎動脈、腎静脈といいます。
腎臓の役割
腎臓の役割は、体内の余分な水分や老廃物などを尿として体外に排出することですが、体外に排出される尿は、腎臓が働いた結果のほんの一部です。
尿の生成と血液の浄化
心臓から送り出される血液の多く(約25%)は腎臓に届きます。
腎臓に届いた血液は、糸球体と呼ばれる血管が複雑に集まった組織の中で濾過されます。
濾過された液体を「原尿」といい、原尿に含まれる成分のうち、塩分・カルシウム・マグネシウム・カリウム・リンなど必要な物質は血液に戻されます。
老廃物や余分な水分などは尿として排出されますが、その中には血液に戻すような、体に必要な物質も含まれます。
物質としては必要だけど過剰に存在すると「量的に不要」と判断し排出しているのです。
つまり、腎臓は、血液を濾過するだけでなく、血液の成分を調整しているのです。
その判断は、他の臓器から受け取る情報を基に行っています。
腎臓は、休むことなく血液を濾過し、一日に約180ℓの原尿を作りますが、およそ99%は血液に戻されます。
尿として排出される量は、わずか1%ほどなのです。
酸素量の調整
体に酸素が不足すると腎臓が反応し、エポと呼ばれる物質を出します。
エポは血流に乗って骨に届き、体に酸素が必要なことを知らせます。
すると、骨髄において赤血球が増産され、より多くの酸素を体中に運べるようになります。
運動をしたり酸素が少ない高地などに行ったりすると、最初は息苦しく感じますが、そのうち体が慣れてくるというのは、正にこの腎臓の働きによるものです。
血圧の調整
腎臓から出されるレニンと呼ばれる物質は、血圧を上げる作用をします。
血圧が高くなると腎臓はレニンを出す量を下げ、血圧の上昇を抑え調整します。
このように腎臓は、血圧を監視し、血圧を正常に保つ働きをしています。
老化に影響
血液中のリンの割合は、長寿な生物では低く、短命な生物では高い傾向にあるため、リンは寿命に影響していると考えられています。
リンは、骨や歯をつくる成分になったり、筋肉や脳などの様々な組織でエネルギーをつくり出す時に必要な物質です。
しかしながら、血液中のリンが多過ぎると、骨粗しょう症になったり血管が石灰化して動脈硬化を起こしたりしてしまいます。
このようにリンの量の異常は、老化の一因と成り得るので、リンの量の調節をしている腎臓は、寿命に大きく影響していると考えられます。
腎臓に関連する病気
腎臓は、全身を巡る血液の成分を管理する働きをしていますので、腎臓が適切に働かないと血液の質を維持できなくなり、他の臓器もダメージを受けてしまいます。
その結果、「多臓器不全」となり死亡するリスクが極めて高くなります。
そのため、腎臓の状態を維持することは、元気で長生きするための「要(かなめ)」となります。
腎臓に関する主な疾患は以下が挙げられます。
- 急性腎不全
- 慢性腎不全
- 腎炎
- 腎結石
- 尿管結石
- 腎臓癌
- ネフローゼ症候群
- IgA腎症
- 糖尿病性腎症
- 遊走腎
- 腎血管性高血圧
- 腎梗塞
腎機能の状態を確認する
血液濾過の場である糸球体は再生できません。
そのため、機能不全や損傷を受けた場合は、人工透析による血液濾過が一生必要となってしまいます。
現代の日本人は、腎臓に負荷がかかる塩分の摂取量が多い傾向にあり、いつの間にか腎臓にダメージを与えている場合があります。
しかしながら、腎臓は痛みなど症状がほとんど出ないため、気づいた時には手遅れになってしまいます。
そうならないためにも是非、健康診断や人間ドックなどで定期的に状態を確認し、医師や保健師などの指導を受け、早期に生活スタイルの見直し方の参考にすることをお勧めします。
一般的な健康診断で腎機能の指標にしているのは、以下の数値です。
血清クレアチニン
男性:1.2mg/dl以下、女性:1.0mg/dl以下
腎機能測定ツール
※対象年齢18歳以上(血清クレアチニン値が必要です)
出典:一般社団法人 日本腎臓学会
腎臓を守る
腎臓を守るには、腎臓の負担を軽減することが必要です。
腎臓には絶えず大量の血液を処理しなければなりませんので、血液を含む循環器系の健康維持は、結果として腎臓の負担を軽くします。
腎臓への負担が減ると血清クレアチニンの値を下げることにも繋がります。
腎臓の働きを助ける食品の例としては、以下が挙げられます。
ただし、腎臓に疾患がある場合は、かえって腎臓に負担をかけてしまう場合もあるので、医師や保健師などの指導を受けてください。
黒ゴマ
血行促進、老廃物の排出を促進
鰹節
アスパラギン酸:有毒なアンモニアの排出を促進
海藻
血圧を下げる
果物(バナナとキウイなど)
利尿作用
野菜(ブロッコリーなど)
解毒作用
さいごに
腎臓は血液を濾過し、体内の余分な水分や老廃物などを尿として体外に排出しています。
また、血液を濾過するだけでなく、血液の成分や血圧を調整しています。
血液の管理をしている腎臓の状態を管理することは、寿命を延ばす鍵と成り得ます。
元気で長生きするために、腎臓を守ることを意識した生活習慣を送ることをお勧めします。