身体

【骨】体を支える柱であり、将来の健康を支える貯金箱

健康のためにカルシウムを摂って骨を強くしたほうが良い、ということは広く知られていると思います。

骨が弱いと折れ易くなり、骨折すると思うように動くことができなります。

折れた骨は適切に処置すれば元の形に治りますが、治るまでに時間がかかります。

特に高齢者においては、治りも遅く、そのまま寝たきりの生活になってしまう恐れもあります。

骨折すると直ぐに生活に影響を及ぼし、その影響が長い期間続くので、骨折しないよう予防することは重要です。

 

骨とは?

「カルシウムを摂って強くする」といわれるとおり、骨の主な成分はカルシウムです。

約70%がリン酸カルシウムを主とした無機質成分で、残りはコラーゲンなどの有機質成分でできています。

骨と骨が組み合わさって形作られることを、骨格といいます。

成人の骨格は、約200個(乳児で約300個)の骨で構成されています。

成人と乳児とで骨の数が異なるのは、成長に従い幾つかの骨がつながるためです。

また、数を「約」としているのは、成長の過程でつながる骨の数に個人差があるためです。

 

骨代謝

骨を「強くする」「弱くなる」といわれるとおり、骨は一定の状態であり続けるのでなく、変わります。
そのことを骨代謝といい、破骨細胞によって古い骨は壊され、骨芽細胞によって新しい骨に置き換えられるということが繰り返されています。
その周期は約3か月で、全身の骨が入れ替わるには約3年かかるといわれています。

骨代謝には、栄養素だけでなく、運動も影響しています。

骨の材料となるカルシウムやコラーゲンなどは当然必要です。
ビタミンDは、カルシウムの腸管吸収を促進するなど、骨づくりを助ける作用があります。
また、運動などで骨に衝撃が加わると、衝撃に耐えられるよう骨を強くしようとします。
逆に、骨に衝撃を与えない生活をしていると、骨を強くする必要がないと判断し、骨芽細胞の働きが抑えられてしまいます。
つまり、骨代謝のバランスは、骨に加わる衝撃によって調節されています。

 

硬骨と軟骨

軟骨は、骨格を構成する硬い骨とは異なり、約70%が水分で、その他はプロテオグリカン・コラーゲン・ヒアルロン酸などでできています。
軟骨成分としてよく聞くグルコサミン・コンドロイチンなどは、プロテオグリカンの材料となります。

  • プロテオグリカン:糖と蛋白質の複合体
  • コラーゲン:蛋白質が繊維状に集まったもの
  • ヒアルロン酸:ムコ多糖類(粘性のある糖類)の一種

 

骨の役割

骨は体を支えているだけに思われるかもしれませんが、骨の役割は大きくは2つあります。

力学的機能(支持運動保護)と代謝的機能(貯蔵造血)です。

支持作用
体の支柱となり、頭や内臓など、様々な器官を支えています。

運動作用
骨は、腱によって筋肉と連結しており、関節を支点として、力点・作用点を形成することで運動が行われます。
関節のような骨と骨があたる部分には軟骨があり、クッションの役割をしています。
軟骨の周りは丈夫な袋(関節包)で包まれており、潤滑油のように滑らかな液が分泌されて関節の滑りをよくしています。
また、骨と骨は関節付近で靭帯でつながっており、それによって関節の動きを安定させています。

保護作用
脳や内臓など衝撃に弱い器官を保護しています。

貯蔵作用
カルシウムをはじめ、リン・ナトリウム・カリウムなどが骨中に貯蔵されています。
カルシウムは、神経系の情報伝達や筋肉の収縮、血液の凝固などに欠かせない物質なので、血液中には常に一定のカルシウムが必要です。
そのため、血液中のカルシウムが不足すると、骨に蓄えられたカルシウムが血液中に放出されてしまいます。

造血作用
骨の内側には、骨髄があり、そこで赤血球や白血球、血小板が作られています。

 

新たに明らかになる骨の機能

近年、骨が出す物質が他の臓器の働きを調整していることが明らかになっています。

オステオカルシン
脳に働きかけ、記憶力を向上させる。
筋肉に働きかけ、エネルギーを効率よく使えるようにする。
精巣に働きかけ、男性ホルモン(テストステロン)を増加させる。

オステオポンチン
免疫細胞の基になる細胞に働きかけ、免疫力を向上させる。

これら物質の働きは、マウスを用いた研究の段階ですが、その働きから、骨が個体の活動性を維持することに大きく関わっていることを示唆させます。

「骨に衝撃が加わるような活動をする → 骨が強くなる → 骨が他の臓器に働きかける → 活動性が維持される → 活動的になる → 骨に衝撃が加わる…」

実に理に適った流れだと思います。

 

骨に関連する病気

骨の病気といえば、骨粗しょう症が最も知られているのではないでしょうか。

他にも関連する病気はいくつかありますが、骨の構造自体に問題がある骨粗しょう症に対しては特に注意が必要です。

  • 骨粗しょう症
  • 腰痛
  • 関節痛
  • 変形股関節症
  • 変形脚関節症
  • 変形性膝関節症
  • 腰部脊柱管狭窄
  • 椎間板ヘルニア

 

骨の病気の代表格「骨粗しょう症」

カルシウムなどの骨を構成する成分が不足し、骨折しやすくなる病気です。
骨の強さには、「骨密度」と「骨質」が関係しています。
骨粗しょう症になると、骨密度が低下し、骨質が劣化します。
骨がスカスカといわれる状態です。

骨密度と骨質

骨密度は、骨の代謝と関係があります。
前述のとおり、骨は、破骨細胞と骨芽細胞によって常に作り変えられています。
通常は、骨の量をは一定に保つように壊される骨と作られる骨は、ほぼ等量です。
ところが、骨粗しょう症になると、代謝のバランスが崩れ、骨の量が減り、骨密度が低い状態になってしまいます。

骨質は、骨が丈夫どうかを示す一つの指標です。
骨を鉄筋コンクリート建造物に例えると、コンクリートに相当するのがカルシウムなどで、鉄筋に相当するのがコラーゲンなどです。
建物を丈夫にするには、コンクリートだけでなく、鉄筋も強い必要があります。
この鉄筋に相当するコラーゲンなどの強さを示すのが、骨質です。

つまり、骨を強くするには、カルシウムなどで骨密度を高くするだけでなく、コラーゲンで骨質を高めることが必要ということです。

骨粗しょう症の原因

骨粗しょう症になる要因は、カルシウムなどの栄養不足を含め、他には例として以下が挙げられます。

高齢
加齢によって、腸内でのカルシウムの吸収が悪くなります。
そのため若い頃と食事で同じ量のカルシウムを摂っていても、骨密度が低くなってしまいます。

過度のダイエット
過度なダイエットは、気を付けないとカルシウムを含めた栄養素が不足し、骨が弱くなります。
特に骨が成長する成長期に過度なダイエットをするのは注意が必要です。
骨量は20歳代で最大になりますが、この時期に骨密度を十分高めておかないと、骨粗しょう症を起こしやすくなります。

運動不足
運動によって、骨に適度な負荷をかけると骨芽細胞が活性化し、負荷に耐えられるように、より強い骨を作ろうとします。
そのため、運動不足だと現状より強い骨にはならず、どんどん弱くなっていく傾向があります。

喫煙
喫煙すると胃腸の働きが抑えられ、カルシウムの吸収を妨げます。
また、女性では骨から血液中へのカルシウムの流出を防ぐ女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が妨げられます。
そのため喫煙習慣のある女性は、喫煙習慣のある男性より骨粗しょう症になりやすいということになります。

過度の飲酒
過度の飲酒は骨芽細胞の働きを妨げ、骨を作る働きを低下させます。
適度な飲酒はカルシウムの吸収の面からは特に影響はありませんが、お酒には利尿作用があるため、吸収されたカルシウムが排泄されてしまうこともあります。

糖尿病や慢性腎臓病などの生活習慣病
インスリンには骨芽細胞を増やす作用があります。
糖尿病は、インスリンがうまく働いていない状態なので、骨芽細胞が不足し、骨密度が低くなる傾向があります。
また、慢性腎臓病は、血液中のカルシウムが不足し、それを補うために骨からカルシウムが溶け出すことで、骨密度が低くなる傾向があります。

 

骨を強くする食事

骨を強くするためには、骨の材料となる物質や、骨作りに関与する物質を摂ることが必要です。

カルシウム・ビタミンD・ビタミンKは骨づくりに特に役立ちます。

カルシウムとビタミンDを同時に摂ることで、腸管でのカルシウム吸収率がよくなります。

ビタミンKは、骨にある蛋白質を活性化し、骨の形成を促進させる作用があります。

また、蛋白質の摂取量が少ないと骨密度低下につながりますので、意識して摂取することが必要です。

栄養やカロリーのバランスがよい食事を規則的に摂るのが、食事療法の基本です。

カルシウム
牛乳・乳製品・小魚・干しエビ・小松菜・チンゲン菜・大豆製品など

ビタミンD
魚類・シイタケ・キクラゲ・卵など

ビタミンK
納豆・ホウレン草・小松菜・ニラ・ブロッコリー・サニーレタス・キャベツなど

蛋白質
肉類・魚類・乳製品・卵など

 

日光浴でビタミンDがつくられる

ビタミンDは、日光を浴びることで体内でも合成されます。
夏は木陰で30分程過ごしたり、冬は30分~1時間程散歩に出かける程度を目安とすることで十分のようです。
日光を浴び過ぎるとシミや皮膚癌になることもあるので注意は必要ですが、骨を維持することを意識して積極的に外出する機会を作ることをお勧めします。

 

骨を強くする運動

スポーツでなくとも体を動かすことは、多かれ少なかれ骨に負荷をかけるので骨づくりに役立ちます。

日常生活の中で積極的に歩いたり階段を使ったりして、できるだけ運動量を増やすことをお勧めします。

より強い骨を目指すには、ジョギングやウエイトトレーニングなど日常生活より負荷の強い運動が必要です。

特にジャンプするなど骨に衝撃が加わる動きが効果的です。

くれぐれも、膝など関節を痛めないよう、急激な運動は避けてください。

骨は急激に強くなりませんので、無理をせず徐々に負荷を大きくするなどして、体の調子をみながら継続することが大切です。

 

定期的に骨密度検査へ

血液中のカルシウム濃度は一定に保つよう調整されるので、カルシウム不足でも骨から血液中にカルシウムが供給され、血液からはカルシウム不足は判断できません。

骨の状態を確認するために、定期的に骨密度検診を受けることをお勧めします。

骨密度検診は、一般的な健康診断や人間ドックの検査項目には含まれていないことが多いですが、検診の際などに追加することもできます。

受診条件は住んでいる所や医療機関によって異なりますので、ご不明な点がありましたら、医療機関やお住まいの地域の行政のホームページなどにお問い合わせください。

参考:関連情報

 

さいごに

骨は、体を物理的に支えたり守ったりするだけでなく、体に必要な物質を貯蔵したり血液を作る場でもあります。

特にカルシウムは、骨の主成分としてだけでなく、生命活動において重要な役割をしている物質です。

日本人のカルシウム摂取推奨量は、年齢によって差はありますが、1日あたり約600~800mgといわれています。

にもかかわらず、日本人のカルシウム摂取量は、不足している傾向にあります。

カルシウムが不足すると、骨に蓄えられたカルシウムが血液中に放出されて骨が弱くなってしまいます。

ヨーロッパなどに比べ、日本の土壌にはカルシウムが少ないので、水や作物のカルシウム含有量も少ない傾向にあります。

そのため、積極的にカルシウムを摂ることが必要です。

摂取の目安は・・・

牛乳の場合、カルシウム含有量は、約110mg/100mLなので、毎日700mL程必要です。

煮干しの場合、約44mg/尾(2g)なので、毎日18尾程必要です。

もちろん他の栄養素の摂取量も考慮して、日々様々なものからカルシウムを摂取することが必要です。

また、摂取したカルシウムは吸収・貯蔵されないと効果的でないので、ビタミンD・ビタミンKの摂取や骨に衝撃を与える運動・日光浴なども重要です。

カルシウムが不足するとイライラするといわれますが、骨の状態までは分かりませんし、骨が弱くなってから注意しても改善するまでに長期間かかります。

骨に貯金する意識で、日頃から気を付けて過ごされることをお勧めします。

 

 

 

 

 

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