体のすべての細胞は、活動するために栄養や酸素を必要とし、老廃物や二酸化炭素を除去する必要があります。
そのやり取りは主に血液を通じて行われています。
その血液を全身に送っているのが循環器です。
循環器とは?
心臓から送られた血液は、全身の血管を巡り心臓へと戻り、再び心臓から送られ全身を巡り戻ってきます。
血液には免疫のためのリンパ球も含まれていますが、リンパは血液中だけでなく、リンパ液としてリンパ管を通って全身を巡っくることを繰り返しています。
このように血液やリンパ液を循環させる働きを行う器官(心臓・血管・リンパ管・リンパ節など)を循環器といいます。
循環器は、血液を循環する血液系とリンパを循環するリンパ系とに分かれます。
循環器の役割
循環器の役割は、血液とリンパ液を全身に循環させることによって、体に必要なものを運び、不要なものを除去することです。
血液の循環
血液は、全身の血管を巡り栄養や酸素を各細胞に届け、二酸化炭素や老廃物などを受け取ります。
血液中の老廃物は、腎臓を通る際に除去された後、尿中に排出されます。
心臓に戻った血液は肺へ送られ、二酸化炭素と酸素を交換します。
そして肺から心臓に戻った後、再び心臓から送られ全身を巡ります。
リンパの循環
リンパは、血管だけでなく、リンパ管も通って全身を巡ります。
リンパ管は、静脈に絡みつくように存在し、血管では回収できない大きさの物質(蛋白質や脂肪、病原体など)を水分と共にリンパ液として回収します。
リンパ液は、リンパ節を通る際に免疫細胞により病原体などを排除された後、静脈に流れ込み血管系に合流します。
このようなリンパ節による濾過的作用によって、体に悪影響を及ぼす物質をリンパ節で止め、全身に広がることを防いでいます。
リンパ液は心臓の動きでは流れない
リンパ管は、血管とは別に存在しており、血流とは別の流れになっています。
リンパ管には心臓のようなポンプの働きをするものがありません。
そのため、リンパ液の流れは継続的ではなく、リンパ管の近くにある血管の拍動や消化管の動き、あるいは歩行や運動による筋肉の収縮・弛緩の影響を受けてゆっくりと流れています。
リンパマッサージとは、リンパ管が取り込む物質の量を増やすことや、リンパ液の流れを速めるために行うマッサージです。
むくみが取れる、免疫力が高まるという効果が期待されているのはそのためですが、マッサージの強さや方向、順序などには知識と技術を要します。
循環器に関連する病気
循環器がうまく働かないと、全身に栄養が行き渡らず、老廃物や病原体などの毒素も溜まってしまいますので、将来的に様々な病気を引き起こす恐れがあります。
特に血液と血管は重要で、血液中のコレステロールや糖分を適正に保つこと、血管の丈夫さとしなやかさは、健康長寿のために欠かすことができない要素です。
なお、国立循環器病研究センターによると、循環器に関する主な疾患は以下が挙げられています。
・糖尿病
・高血圧
・原発性肺高血圧症
・動脈硬化
・閉塞性動脈硬化症
・胸部大動脈瘤
・腹部大動脈瘤
・大動脈解離
・脳卒中
・心不全
・不整脈
・心臓弁膜症
・虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞など)
・腎不全
・慢性腎臓病
・周産期心筋症
生活習慣病予防の重要性
前述のとおり、循環器の働きは、全身に直接的に影響し、特に血液と血管の状態は重要です。
そのためにまず気を付けることは、生活習慣病(高血圧、脂質異常症、糖尿病など)の予防です。
特にLDLコレステロールには注意が必要です。
LDLコレステロールは、動脈硬化の原因となるため悪玉コレステロールと呼ばれています。
LDLコレステロールは、血管の壁に入り込む性質を持っているため、血液中のLDLコレステロールが多いと、動脈が硬くなったり通りが悪くなる動脈硬化になってしまいます。
また、血液中の糖分が多いと、LDLコレステロールが血管の壁に入り込みやすくなってしまいます。
動脈硬化は、生活習慣病を引き起す主な要因なので、動脈硬化の予防は、生活習慣病の予防に重要です。
血液中に食品由来のコレステロールは少ない
血液中のコレステロールは、食事由来が約20%で、残りは肝臓で合成されています。
コレステロール自体は、生命活動に必要なものなので、体内の量を一定に保つように調節されています。
そのため、食事からの摂取量を減らしても、減らした分は肝臓での合成量が増えることになるので、短期間でコレステロール値は下がりません。
食生活の見直しのポイント
血液中のLDLコレステロールは、各細胞(脳細胞以外)の活動のために使われますが、各細胞のコレステロール必要量も一定を保つように調節されていますので、必要以上のLDLコレステロールは使われず血液中に残ります。
血液中のコレステロール量は、肝臓の働きによって調整され、不要分は排出されますが、肝臓の機能が弱るなどの要因で、その調整が適切に働かなくなります。
このようなことからも、血液中のコレステロール量は少なくとも、食品からの摂取量を減らすこと、食品に含まれるコレステロールの吸収を抑える物質を利用すること、肝臓の働きを助けるものを摂取することは重要です。
動脈硬化の予防に良いとされている食事は以下のようなものです。
- 魚類、大豆製品の摂取を増やす。
- 野菜、果物、未精製穀物、海藻、キノコ類の摂取を増やす。
- 肉の脂身、乳製品、卵黄の摂取を抑える。
- 塩分を多く含む食品の摂取を抑える。
- アルコールの過剰摂取を控える。
運動する意識を持ち継続することが大切
LDLコレステロール値を適正に保つには、各細胞の活動量を上げ脂肪を燃焼させることも必要ですので、食生活の見直しだけでなく運動習慣の見直しも必要です。
特に取り入れたいのは、有酸素運動(ウォーキングやジョギング、階段の昇降など)を長時間行うことです。
スポーツや趣味などに励むのも良いですが、基本的には日常生活の中で積極的に体を動かす意識を持つことが大切です。
普段の生活の中で少しでも長く、大きく、深く体を動かし、その際に筋肉の動きや血液とリンパの流れを意識すると良いかと思います。
ヨガや太極拳のような動きのイメージです。
意識してみると、日常生活では、前進や上下、引き寄せる動きは多いかと思いますが、後進や左右、押したり引っ張られたり捻ったりする動きは意外と少ないのではないでしょうか。
そのようにして普段動かすことが少ない関節や筋肉を発見できると意外と楽しいものです。
そして、そこを動かすことを日常生活に取り入れ、少しでもポカポカと暖かくなった感覚を得られれば、以前より血液とリンパの流れは良くなっています。
特に手先、足先のような血液とリンパの流れが滞りやすい末端や、股関節肩甲骨のような大きな動きに使う部位が動かせているか意識することをお勧めします。
10年以内の狭心症・心筋梗塞の発症率
狭心症、心筋梗塞とは、心臓の冠動脈が動脈硬化を起こし発症する病気です。
胸痛・胸部圧迫感などの症状を起こすのが狭心症、完全に冠動脈が閉塞または著しい狭窄が起こり血液の流れずに心筋が壊死してしまうのが心筋梗塞です。
狭心症、心筋梗塞などは、発症するまで自覚症状がなく、気づいた時には治療が必要になってしまいますが、日本動脈硬化学会の計算ツールで、今後10年以内の狭心症・心筋梗塞の発症率が分かるようになっています。
基本的に医師や看護師などの医療従事者向けとなっていますが、そうでない方も使用可能とのことです。
スマホ用のアプリもダウンロードできますが、Web版もあります。
Web版は、医療従事者ですか?との質問に「はい」と答えれば診断できます。
さいごに
循環器の働きを維持するためには、血液と血管の質を維持することが重要です。
そのために生活習慣病の予防を心がけることが重要です。
生活習慣病の要因は、「運動」と「食事」だけでなく、「休養」、「喫煙」、「飲酒」も重要な要因です。
血液や血管の状態は目に見えないので、効果は感じられないかもしれませんが、意識し継続することが大切です。
どの要因も、生活習慣の見直しが必要ですが、生活習慣の改善状況を体重や体形などだけでみるのは危険です。
循環器の病気は、かなり進行してからでないと自覚症状がないため、医療機関での検査が必要です。
健康診断や人間ドックなどで定期的にデータとして確認し、医師や保健師などの指導を受け、生活スタイルの見直し方の参考にすることをお勧めします。
一般社団法人動脈硬化予防啓発センターの血管健康クラブもご参照ください。