健康維持のために運動や食事に気を付けている方は多いのではないでしょうか。
適度に運動して色々なものをバランスよく食べることは、誰でも理解しているほど健康づくりに大変役立つことです。
ここでいう「運動」は、一般的にはスポーツや趣味などで特別な時間や状況を作って体を動かすことを意味します。
しかしながら、生活習慣病の予防の観点では、いわゆる運動よりも効果的に体を動かす状況があります。
それがNEAT(ニート)です。
NEATとは?
一般的に耳にする「ニート」は、労働に関する用語だと思いますが、その綴りはNEET(Not in Education, Employment or Training)です。
ここで取り上げているのは、NEETとは別の用語で、綴りは NEAT(Non-Exercise-Activity-thermogenesis)です。
「非運動性熱産生」ともいい、スポーツや趣味などで行う「運動」ではなく、家事や通勤・通学など日常生活における動作で消費されるエネルギーのことです。
生活習慣におけるニートの重要性
プロスポーツ選手やアスリートを除く、標準的な体格の成人におけるエネルギー消費の種類とその割合は、大きくは以下の4つに分けられます。
基礎代謝(約60~70%)
呼吸をしたり、体の各臓器や器官が働くためなどに使われる、生きるために最低限必要なエネルギーです。
つまり、じっとしている時でも消費しています。
食事誘発性熱産生(約10%)
食事をしたあとに、消化、吸収、代謝に使われるエネルギーです。
つまり、食事をきっかけに消費しています。
運動(約0~10%)
スポーツや趣味などで使うエネルギーです。
つまり、自発的に運動しないと消費しません。
ニート(約20~30%)
家事や買い物、通勤、通学など日常生活における動作で消費されるエネルギーです。
立つ、座る際などに姿勢を維持することも含みます。
つまり、生活の中で、必然的に、時には無意識に行っていることで消費しています。
運動とニートの割合には個人差があり、体を良く動かす職業の方や運動を積極的にされている方には当てはまらない場合がありますが、一般的には運動よりもニートのエネルギー量の方が多い傾向にあります。
つまり、食事が同じ場合、
一日30分から1時間ほどの運動をしていても、それ以外の時間は家でじっとしていると運動不足になり、太る傾向にあります。
反対に、なかなか運動する時間が作れなくても、ニートを見直すことで日々のエネルギー消費量が上がり、太りにくい生活を送れる傾向にあります。
運動強度(METs)
座って静止している時のエネルギー消費を1.0とすると、立っているときは1.2、歩いているときは3.0といわれています。
このような考え方を運動強度といい、METs(Metabolic Equivalents、メッツ)という単位で表します。
同じ時間行ったときの消費エネルギーを比較するために使います。
【18歳~64歳の身体活動基準】(単位:METs)
通常歩行:3.0
早歩き:4.3~5.0
ゆっくりジョギング:6.0
ゆっくり階段を上る:4.0
速く階段を上る:8.0
ラジオ体操第一:4.0
ゆっくり平泳ぎ:5.3
ゴルフ:3.5~4.3
卓球:4.0
参考:
国立健康・栄養研究所 改訂版『身体活動のメッツ(METs)表』
公益財団法人 長寿科学復興財団 「健康づくりのための身体活動基準」
厚生労働省 「運動施策の推進」 健康づくりのための身体活動基準2013
消費カロリーの計算方法はいろいろありますが、ここでは以下の式を引用します。
参考:
厚生労働省 「運動施策の推進」 健康づくりのための身体活動基準2013
この消費カロリーの目安を参考にニートの行動を見直すことで、わずかな差であっても積もり積もれば生活習慣病の予防となる日常生活を送れるようになります。
まずは、座ったり静止している時間を少なくすることを意識することをお勧めします。
食事制限と運動(ニート含む)は釣り合わない
太らないように食事制限を100㎉分するのと運動で100㎉消費するのとは、生理的には同じではありません。
食事制限で特に炭水化物や糖質を抑えると低血糖状態になり眠くなるなど活動的に動けなくなります。
糖質を摂り過ぎても、ほとんどはその日の内に消費され、脂肪になるのは多くても一日10gほどといわれています。
ただし、中性脂肪はそのまま体脂肪に合成されますので、炭水化物や糖質を制限するより脂質を控えるほうが効果的です。
一方、運動するとエネルギーを消費するだけでなく、筋肉も鍛えられエネルギー消費効率が上がります。
また、運動すると自律神経の機能が高まり、交感神経が鍛えられ、維持、改善されます。
体内の脂肪の蓄積量は交感神経により制御されているといわれていますので、交感神経が適切に働くことは効果的です。
減量にはまずは運動、より速い減量を目指すには運動と食事制限することが望ましいといえます。
参照:Regulation of Body Weight in Humans: Jequier and Tappy: Physiol.Rev.79:451-480,1999
さいごに
動物は、飢餓に耐えるために栄養を蓄える仕組みを備えています。
近年、日本では飢餓状態になることは極めて少なくなりました。
費用はかかりますが、遠くに行かなくても多種多様な食品を入手することができます。
加えて様々なことが機械化され、日々の生活は益々便利になっています。
食べたいものを選んで入手でき、あまり動かなくても生活ができてしまいます。
しかしながら、私たちの体はそのような状況に適用できていません。
定期的に栄養を摂ることができても、飢餓に備えて体内に蓄えようとします。
そのような飢餓に耐える仕組みを持った体でも、生きていくために必要な栄養全てを蓄えてはおけないので、様々な栄養を定期的に摂る必要はあります。
食事を極端に減らすことは、肥満の解消に適した方法ではありません。
近年の肥満に伴う生活習慣病は、食事に起因するよりは運動不足によるものと考えられます。
家事は便利な設備や家電などで手間をかけずにでき、家の中で座っている時間が増えているのではないでしょうか。
仕事に出ても、体を使う作業は機械化され、デスクワークの割合が多くなる一方です。
移動はデスクから会議室やトイレ、昼食などが主で基本的に座ってる方も多いのではないでしょうか。
また、交通手段の発達により、あまり体を動かくことなく遠くまで移動できてしまいます。
便利がもたらす弊害ともいえるかもしれませんが、このような便利さは社会にとって必要なことだと思います。
だからこそ、
体を動かせる機会を見つけ、積極的に動く意識を持つことが大切となります。
元気で長生きするためには、運動不足は避ける必要があります。
そのために、
運動不足が原因であるとされる生活習慣病の予防に、ニートを取り入れることをお勧めします。
ニートを基礎とし、それに加えてスポーツや趣味などの運動を取り入れることでが効果的と考えます。
結果、基礎代謝が上がり、より効果的になることも期待できます。