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【LPS】「免疫のビタミン」と呼ばれる理由とその変わった存在場所

 

LPSは「免疫のビタミン」と呼ばれ、2016年頃から話題に上がっているものです。

生物学的には以前からよく知られており、分野によっては厄介なものとして扱われています。

 

LPSとは?

一般的にはあまり聞き慣れないかと思いますが、自然界に普通に存在する物質です。

正式名称はリポポリサッカライド(英: Lipopolysaccharide)で、日本語では糖脂質またはリポ多糖といいます。

  • リポ:リピッドで脂肪や油を意味する
  • ポリ:多いことを意味する
  • サッカライド:炭水化物を意味する

 

存在場所

グラム陰性細菌の細胞壁の外膜に存在しています。

細菌は、その細胞を取り囲む細胞膜・細胞壁の構造の違いから、グラム陰性細菌とグラム陽性細菌に分類されます。

ここでは、その分類の詳細は割愛しますが、LPSはグラム陰性細菌だけが持っている物質で、外膜の外側に埋め込まれた状態で存在しています。

食用植物には必ずといっていいほどグラム陰性細菌が共生しているため、LPSは野菜等に付着していますので、私たちは食事を通じて日常的に摂取していることになります。

 

免疫ビタミンと呼ばれる理由

LPSは、免疫細胞である樹状細胞やマクロファージを活性化し、未分化なT細胞をヘルパーT細胞へと分化誘導する働きを持つことが分かっています。

マクロファージとは白血球の一種で、血液に入り込んだ細菌や異物を取り込んで消化するとともに、その抗原の情報をヘルパーT細胞などに伝える役割をします。

ヘルパーT細胞はマクロファージと協力して抗体生産(免疫反応)を行います。

また、LPSは、エンドトキシンという別名もあります。

エンドトキシンは遊離した状態で血液中に存在すると発熱や種々の生体反応を引き起す毒性物質という一面もあります。

とはいっても、それはLPSが遊離した状態かつ血液中に存在する場合のみです。

LPSは細菌から容易には遊離せず、細菌が死滅したときなどに細胞が融解・破壊されることで遊離します。

食事をするたび発熱することはないことからも、当然ながら自然摂取の場合LPSは無害です。

LPSは、エネルギー源や体をつくる成分ではありませんが、健康維持に役立つ働きがビタミンの働きに似ていることから、「免疫ビタミン」と呼ばれています。

 

注目する点

摂取したLPSは、消化器に属する腸を通過します。

腸は、吸収する物質が体に必要か不要か判断し、必要なものは吸収し不要なものは排除する門番のような働きをしています。

その働きには腸の絨毛に存在する免疫細胞も深く関わっていますので、摂取したLPSが免疫細胞を刺激する機会は日常的にあります。

効果については、科学的根拠がないという理由で否定的な意見も多くありますが、「科学的根拠がない=摂取する意味がない」とは言い切れません。

これまで報告で作用は理論的に説明・推測されているので、科学的根拠についても徐々に明らかになっていくと思われます。

今後研究に期待しましょう。

補足
LPS=エンドトキシンは、遊離した状態で血液中に混入すると毒性を持つので、血管内に直接注入する注射剤タイプの医薬品を製造する際には、製造工程内にエンドトキシンが存在してはなりません。
また、病原性を持つ可能性のある微生物も製造工程内に存在してはなりません。
そのため注射剤は無菌管理された環境で製造する必要があり、外部から持ち込んだ容器・器具等は高圧蒸気や乾熱により滅菌(特定の微生物だけでなく全ての微生物を死滅させること)します。
ところが厄介なことにLPSは熱的・化学的にも安定しており、通常の滅菌に用いられる高熱条件で微生物を死滅させても、グラム陰性細菌が存在していた箇所にLPSが不活化されない状態で残存してしまいます。
そこで注射剤の薬剤に直接触れる容器内部や製造工程に対しては容器内部や製造工程:250℃で30分間の加熱、製造用水に対しては逆浸透膜によるろ過という特別な処理してLPSを不活化することが必要です。

このような医療の観点では、遊離したLPSは排除すべき物資なのですが、前述したとおり自然摂取では全く無害であり、免疫系の向上に役立つと考えられるため、両極端な面があります。

 

摂取量の目安

LPSの1日の摂取量の目安は、体重10kgに対して100㎍が基準という事は、体重50kgの人の理想の摂取量は500㎍となります。

また、摂取しすぎても効果が比例して上がることはなく体内で生成・蓄積することもできないので、毎日継続的に摂取することが大切です。

LPSを多く含む主な食品は以下のようです。

LPS含有量(μg/g) 目安量 目安量を摂取した時のLPS量(μg)
ほうれん草 1.3  おひたし(68g)  15
トマト 0.8  中1個  6.4
ワカメ  21.2  酢の物小鉢(21g)  21
レンコン  5  きんぴら(30g)  52
メカブ  42.8  市販酢の物(25g)  64
明日葉(粉末)  13.8  茶パック1包(4g)  55
大豆  0.02  豆腐1/2  3
シイタケ  0.6  てんぷら1枚(40g)  7.7
小麦粉  0.2  パン一枚 8.8 
金芽米  0.53  茶碗1杯 35 
精製白米  0.09  茶碗1杯  6.8
(上記データ参考文献 Inagawa, H., et al. Chem. Pharm. Bull. 40, 994-997 (1992).他 )

上記表にはありませんが、玄米も多く含んでいる食品の一つです。

参考値:0.5μg/g:茶碗1杯あたり32μg

 

同じ食品でも条件によって含まれる量が大きく異なる

LPSは、食品に含んでいるというよりは付着しているといったほうが適切かもしれません。
微生物は土壌に多く存在します。つまり洗われた表面を削るような加工を経ると、量が減ってしまいます。
そのことから、同じ食品でも清浄度の高いものほどLPSが少ない傾向にあります。
衛生環境の向上に反比例して食事からのLPS摂取量が減少しているといえます。

 

さいごに

LPSは普通に野菜・穀類を取り入れた食事をしていれば多くの食品から摂取できますが、目安となる量を摂取するには、食品の清浄度に注目しつつ日々バランスの良い食事を心がける必要があります。

それを補助するために、LPSを効率よく摂取できるような健康食品が販売されています。

一例を紹介しますので、興味のある方は以下のリンク先をご覧ください。

 

 

 

 

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